2/28/2017

2月1日に編曲楽譜が出版発売されました ~複雑な著作権について思うこと

 2月最後の日・・・。
 東京の冬はこんなに寒かったかと、この冬は寒さストレスとの戦いです。
 流行していたインフルエンザもほぼ落ち着いたようで、我が家は今回は誰もかからず、のり切れました。
 私はこれまで、インフルエンザにかかった我が子を抱えて眠っても移されたことがなく、インフルエンザの経験が1度も無いのですが、これは毎日10杯は飲んでいる煎茶のお陰(貧血にはあまり良くないのに、体の除菌はされている)と、勝手に思っている今日この頃です。

 さて今月1日、‟ミュージック・ベルズ ”という楽譜専門出版社より、2曲のピアノのための編曲楽譜を発売していただきました。曲集ではなく、ピースの出版です。

 パッヘルベル作曲の「カノン」(パッヘルベルのカノン・・・これは通称で、私が編曲したものの原曲名は「3つのヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーク二長調」というものです)、それと、もう1曲はカッチーニ作曲の「アヴェ・マリア」です。
 「カノン」のほうは、息子がスマホのソフトの ‟ピアノタイル”(選曲した曲が電子音で流れ、それと同時にタイルが流れ出てきて、音と同時にタイルを正確に押すとクリアでき、速い曲にステップアップしていき、タイルを押すタイミングを外してしまうとそこで曲がストップするというもの)で、繰り返しカノンを選んで遊んでいるうちに、「これ、いつかピアノで弾きたい」と言い出し、私が、既に編曲出版されているものを捜してみたものの、これと思うものが無かった為(手が小さいと押さえきれない和音に対して、省略しても良い音の記譜がされているものが無いことと、原曲をそれほど崩さずにアレンジされているものが見つからなかったこと等)、「自分で書けばいい」というところに自然に行き着き、昨年11月頃に編曲を始めたのでした。
   しかし、編曲の途中で、息子に「ここのフレーズいいでしょう?」などと言いながらピアノを弾いて聴かせると、「えーっ、そんなに難しくしないで」とか、「ちょっとそんなに長い曲にしないでよ、また長くなってる!」などとうるさいどころではなく、何とも根気の必要な作業となりました。 笑
 「アヴェマリア」に関しては、私が大好きな曲で、歌の曲もピアノの曲も既に沢山の編曲楽譜が出版されています。特に吉松隆さんなどは素敵なアレンジをしており、吉松さんが左手のピアニスト用にアレンジしたアヴェマリアは、私の以前の投稿にも出させていただきましたが、大変素敵です。
 しかし、一流の演奏家が弾くのと、そこまでいっていない人、ましてや趣味でちょっと弾けるくらいの人が弾くのとでは、殆ど ゙別の曲” になってしまい、私は「誰が弾いてもそこそこ形になる曲」を残したいと思い、そこにこだわりつつ、カノン同様、原曲を変え過ぎず(好きに変えて気に入った音をどんどん入れていくのは簡単ですが、もし私が作曲したものを誰かが編曲することを考えると、そんなに変えるなら最初から自分で作ってと思ってしまう様な編曲をされたくないと思う気がする為)、その辺りに時間をつかって音を書いていきました。

 これまでにも、編曲は何曲かやっておりましたが、今回、拡散する可能性がわりと高くなる曲であると思っていたところ、やはり何か形としておいたほうが良いと、作曲の関係者からの助言もあり、ちょうど私の意向に合う出版販売形態をとっている出版社があることを知り、編曲し終えた手書きの楽譜を11月中旬~12月にかけて浄譜してもらい、出版審査を経て現在に至ったわけです。
 そして、唯一、「形」として残すものができたかなと、ややホッとした気持ちにもなっているのが正直なところです。

 ところで、ある部分で意外と慎重な私は、「出版」となると後々何か面倒なことが起こるのは嫌ですし、ひっかかることが何点かあり、著作権に対する疑問を払拭しようと、弁護士の先生にいろいろと相談をさせていただきました。
 出版するのであれば編曲についてのルールを、漠然とではなく正しく解らないといけないのが当然だと思いますが、そもそも日本音楽著作権協会(JASRAC)がどこまで何の権利を持っているのかと、昔から演奏会の度に思っていたこともあり、そこへ今回の「カッチーニ」のアヴェマリアに関しては、作曲者の誤認が常識として通っているのを知り(音楽関係者の中でもそれほど知られていないというもので、実は私も編曲出版の審査中にふと気になり、調べてわかったくらいのことなのです)、カッチーニではなく、ヴァヴィロフが作曲者であれば、没後50年経っていない・・・それなのに著作権も含めた出版の審査でひっかからずに通ったことが、かえって心配になったこと、耳コピ―で著作物を作った場合は編曲権の侵害になるのか等、素人の私には何も判断できないけれども把握しておきたいことが多々あったわけです。
 それらを弁護士の先生にどう説明していただいたか、それを全て書けば異常に長くなってしまいますので省略しますが、今回の出版に関しては問題がないという内容を伝えていただき、理解と納得ができてホッとしております。

 現在の著作権について、まだまだ私が知らないことは沢山ありますが、最近の情報(今ニュースでも連日、新しいとされる曲について、来年1月から大手の音楽教室の講師の模範演奏にも著作権料がかかる方針などと出ています)を聞いていると、考えてしまうことが多々あります。

 JASRACが「主眼」と称して掲げている文言は、「音楽の著作者の権利を擁護し、あわせて音楽の著作物の利用の円滑を図り、もって音楽文化の普及発展に資すること」だそうですが、よくよく考えてみると、これは表向きの文言で、実際は真逆の方へ進んでいると思うのは、私だけではないはずです。
 今後文化庁は何を基準にJASRACの方針の判断、決定するのでしょうか?
 ただ、使用する側のルールやマナー違反が往々にしてあるというのも事実かと思われるので、守られるべきところを守るという本来の趣旨が大事にされる必要性はあるかと思いますが、何事もバランスと、限度をどう見極めて決定するのかが大事で、そこが良い方向へ向かうように、私も見守るだけではなく、微力で出来ることは限られますが、携わっていかれたらという思いは持っております。
 私が好きなバロック音楽(バッハ、ビバルティ、ヘンデルなどの時代の音楽)は、当時は教会や宮廷で演奏され、ごく一部の人の間のものであったのが、古典派に移り、最も有名なベートーヴェンが大衆にもクラシック音楽を広める体制をつくり、そこからまた長い歴史を経て現在に至っているのですが、「音を楽しみ、音を学ぶことを共有できる」環境が継続されるために、大概な言い方かもしれませんが、音楽に携わる全ての人が、マナーと節度を守り、今後、より多くの人が音楽に触れ、それによって心が豊かになったり楽しめることを心から願っております。

 尚、今回出版された曲に関して、「弾いてはみたいけど買わずに弾けたら・・・」という方には、pdfファイル(冊子の形態ではなく、印刷していただくもの)に限らせていただきますが、下記のgmailアドレスにお問合せいただければお送り致しますのでお使い下さい。↓
  musicr.group@gmail.com


 これから花粉は嬉しくありませんが、暖かな春の日差しに変わっていくでしょう。
 私の生徒さんにもいますが、受験生の中にはまだまだこれからが勝負という人が大勢いらっしゃると思います。心穏やかに、そしてこれまでの努力が実ることをお祈りしております。


【楽譜掲載ページURL】
http://music-bells.com/?pid=113287282
「パッヘルベルのカノン」


http://music-bells.com/?pid=113285411
「カッチーニ アヴェマリア」